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2015年06月30日

警鐘・・・1

2025年  中津市是則・・・総合研究所
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『おい! ずいぶん長い旅行だったな?』
『はい。今回は・・・、でも収穫でした。』
『ほう。じゃ~ ようやく解決なのかな?』
『はい。』
確認を終えると、安藤はその部屋を立ち去った。
私にとって今回の旅行は始めてではなかった。
ただ、これで終わりにできると言う確信はできた。
自動販売機の横のしゃれた椅子に座ると、缶コーヒーを空け、タバコに火を付けた。
タバコも1,000円を越え、喫煙家には厳しい。
2、3回ふかしてポケットからメモを取出した。
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相原 真 ・・・ 2015年7月死亡
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『あ~、居た居た。探したよ』
『あぁ。ただいま。』
『で、どうだった? 犯人は見つけたかい』
・・・彼には、犯人探しと言っているが、最近の旅行では違うものを探していた。・・・
『もうちょっとだね。見つけたら連絡するよ。』
『絶対だよ。あの犯人が誰なのか?たとえ死んでても知りたいからね。』
『判った。疲れたから帰るわ。』
『お~。じゃあな』
  


Posted by タンクん at 18:20Comments(0)

2015年07月02日

警鐘・・・2

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その事件は猟奇殺人として当時有名になった。
九州の出会い系サイトの関係者のみ次々に殺されたのだ。
そのほとんどが、頭蓋骨に穴を明けられていた。
その真意は未だ解明されていない。
週一で繰り返された惨劇は、ある日ピタリと止まった。
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研究所内のその部屋の壁には、屈んで入る位の穴がある。
中は暗闇で、その向こうに小さな光が見える。
ここは関係者以外は入れない様に管理されている。

穴の中は生暖かく、奥に向かって空気の流れがある。
壁はしっとりと濡れ、奥に行けば行くほど透明な粘液が垂れている。
柔らかな突起物もある。血管の様な管が走り、中を何かが流れている。
中に入って20mほど進んだところに薄いカーテンの様な膜がある。
膜を破ると、勢い良く風が吹き、穴の奥に押し込まれる。

何度来ても、この感覚は好きになれない。
初めて来たのは、安藤に指示されて、ある犯罪者に会いに行った時だ。
彼は知能犯と言うべきか?このプロジェクトの本来の趣旨“殺人者の思考解明”
とはほど遠いものではあったが、初心者向けの思考解明訓練には打って付けだったのだろう。

彼は会社の金をサイトで運用し、利益を会社に還元していた。
法的には特に問題なさそうではあったが、サイト入会者のほとんどが金融機関や企業役員クラスであった。

暇そうな上層部に遊びを提供していただけなら問題は無いと言えるが、会社業績と直結していた裏には、
独自の勧誘方法や持続方法があったはずである。
問題は、関係者の死亡率が高いことである。
  


Posted by タンクん at 08:37Comments(0)

2015年07月03日

警鐘・・・3

白井の潜在意識はさほど衝撃を味わうものではなかった。
彼が犯罪に手を染めるに至った心理の解明の為、彼の過去(中学時代)にも足を運び、
そして解明に勤しんだ。
いざ侵入してしまえば、その思考回路は単純で、ある種もの足りなさを感じるほどだった。
白井は少年時代から頭がよく、周りからは“神童”と呼ばれていた。
田舎ではよくある話である。ちょっとできれば、すぐ噂は広まる。
当然彼は、幼くして一目を置かれ、その様に育った。

彼の本来の性格は優しく力持ちといった様なもので、正義感にあふれ、白黒はっきりさせるタイプ。
後に犯罪行為をするとは思えない。


私は常日頃、性格は環境によって育てられると考えている。
すべての人の本質はさほど変わりなく、その人がその様になるのは、周りの環境のせいで、
決して血液型や遺伝によるものではないと考えている。

白井との付合いの中で、彼が後に犯罪に手を染めない様に働きかけをしたことも・・・・・・
  


Posted by タンクん at 07:18Comments(0)

2015年07月03日

降臨・・・1

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研究所内第2会議室

『いいですか?この研究は犯罪心理学の究極なんです。』
『直接彼らの思考回路を解明できるんですよ。』
『なぜ、何度も犯罪を繰り返すのか?』
『社会復帰のカウンセリングが本当に有効なのか?』
『私たちは思考の根源を解明できるんです。』

『もう一度聞くが、その解明がどう生かされるのかね。』

『第一に犯罪の防止です。犯罪の原因を解明することです。』

『そのペネトレイター(侵入者)が、犯罪をコントロールする危険はないのかね?』

『厳正な管理の下で行っていますし、犯罪を抑制することがあっても、助長することはありません。』
『なぜなら、違う意思が働くことは思考を乱すことになるので、犯罪を犯す純粋性(強い動機)が薄まるからです。』



『厳正な管理下で行っています。・・・』
  


Posted by タンクん at 18:13Comments(0)

2015年07月04日

降臨・・・2

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研究の成果で、穴の出口を特定の時間、空間まで指定できるようになっている。
私は、場所の指定の為、その人物が写った写真を機械にセットした。
穴の扉が開き、中に吸い込まれる感覚で入っていく。
『あぁ、またこの感触。吐気がする。』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・



穴の奥の光を抜けると、目の前に女がいた。
女はシャワーを浴びている。その艶めかしい体はいつ見ても心を揺さぶられる。
『菜緒子、なぜ私を導いたんだ。』
『“まこと”、私はほんとうの事が知りたいの』
『ほんとうの事って?』
『この町はアスから恐怖に怯えるわ。全ての関係者が震え上がるの。』
『何の事だ。何が始まるんだ。』
『あなたは気づいてるはず。』
『・・・・・・・・・』
『だって、非日常の感動が欲しいんでしょ?』
『もう始まってるのよ・・・・・あなたの最高の人生が』
  


Posted by タンクん at 15:23Comments(0)

2015年07月04日

祖業・・・1

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2013年11月
<相原 真>

私は菜緒子に導かれるまま、非日常を楽しんでいる。
会社の再起も順調に思われた。
リーマンショックも何とかやり過ごし、綱渡りではあるが、何とか過ごしている。
私としては、そのことも楽しんでいたのだが・・・
“菜緒子”は始まりを告げて去っていった。

『白井部長が辞めて何とかやってきたけど・・・・』
『そうだよな。げってんだったけど、やり手ではあったよな。』
『知ってるか? 部長がやってたあのサイト、関係者は大物が多かったってな。』
『大物?』
『なんでも、客は金融機関のお偉いさんばかりなんだって』
『・・・・・』
『それで、今回のリーマンの情報もいち早く察知してたらしいぞ』
『・・・・・』
『我社の社長も金持ってるはずだよなぁ~』

同僚の話に、私は直感的に“菜緒子”を感じとった。

菜緒子は誰にでもなれる。そして操れる。
菜緒子の能力があれば、何でもできる。
そう、菜緒子はそれを私に教えたかったのではないか?
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Posted by タンクん at 17:25Comments(0)

2015年07月05日

祖業・・・2

まさに、私の働きかけが白井を違う方向に導いてしまったのではないか?
ただ、白井の行動は彼特有の思考回路によるものであるし、働きかけが多く影響したとは思えない。


研究所の規定では、意識に侵入しても意識を操ってはいけないことになっている。
簡単に人の思考を操れるとは考えていなかったが、“菜緒子”という幻想を使えば
それは案外簡単だった。
その事で“犯罪者の意識解明”といった本来の目的を明確にも出来たと考えている。


白井が巨額の融資を受ける為、特定の秘密サイトを餌に揺すり、駄目なら殺害していくと言った方法は、
そんなに驚くことではなく、ふつうにテレビドラマなどでやってる陳腐なストーリーだった。
ただ、ふつうは実行されないばかばかしい話なのに、まじめに取組んでいた白井のザ・サラリーマンとも言うべき
心理がすごく気になり、報告書を出した後も何度か侵入していた。
一端終了した者に再侵入することは許されていない。

私は2度ほど再侵入した後は、白井の身近な人間に侵入する様になっていた。
それは “相原 真” 白井の後輩であり、後の猟奇殺人の犯人!

彼らには、脳裏の意識コントロールで幻想を見せている。
そう、幻想である菜緒子には実態はないのだ。

侵入を繰り返すことで、“相原 真” は私に依存してしまった。
私の正体を追い求める様になり、あの写真を見つけた。
白井と一緒に写っている写真。
しかし、写っているはずはない。 なぜなら幻想だから・・・。

なぜ菜緒子は写真に写っているのだろうか?
  


Posted by タンクん at 16:02Comments(0)

2015年07月06日

探究・・・1

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2015年 5月
<相原 真>

私は菜緒子と会えない毎日に少し苛立っていた。
もう、2年は会っていない。・・・・・・・・・・・・
非日常を楽しめなくなったからか?
それとも、事件がないからか?
毎週の様に、サイトでの出会いを試みている。
“菜緒子”に会うために・・・・・・

殺人=出会い(再会) 
この法則を確かめるため、私は楽しもうとしている。
最近では、週一のデート、いや週末の殺人が実に心地よい。
ある日ふと思った。
私の脳裏に潜む“菜緒子”は、わたしだけのものなのか?
あの“にやり”がすべて菜緒子の仕業なら、“菜緒子”はいっぱい居るのではないか?
菜緒子に会えれば・・・・・、会って確かめなければ・・・・・
菜緒子の目的は何なのか?
  


Posted by タンクん at 07:12Comments(0)

2015年07月06日

探究・・・2

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殺人が非日常を経験する唯一の手段とは考えていなかったが、究極の方法ではある。
本来の欲望 (普通の人間が普通になにげなく体験したがっていること) を叶えさせることで、
殺人者になる思考の解明ができると考えた。
どの様な思考で殺人に至るのか?

ある種の伝染病と言えるのではないか?

“相原 真”への侵入は、その事を証明する実験だった。

“相原 真”を殺人に誘導するつもりはなかった。

彼にとって非日常を体感する究極の行為が殺人であったと言うことだろう。
ただ、動機は解らない。非日常を感じたいだけで殺人をし続けるものなのだろうか?

たとえどの様な感情が高まったとしても、殺人を繰り返す動機ほどの持続性があるはずがない。
  


Posted by タンクん at 19:07Comments(0)

2015年07月07日

回顧・・・1

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<相原 真>

『なぜだ! なぜ菜緒子は現れてくれない。』

頭に穴を明けるのにそう時間はかからない。
4人目ともなれば、かなり手早くできる。
頭蓋骨は中央が最後に固まる。中央にはもともと亀裂があるのだ。
頂点から後ろに約5cmのところを思いっきりハンマー(とがった方)で叩けば、
すっぽりとハンマーの大きさで穴が開く、白いしわくちゃの脳がすぐに血で染まっていく。
すべてが穴の中央に吸い込まれる様に・・・・

そして、どこからか現れる菜緒子を待っているのだ。

今日も収穫はない。
『菜緒子 教えてくれ。私は知りたいだけなんだ。』

菜緒子のお蔭で、非日常を楽しむことができた。
しかし、非日常はそれを繰り返せば、すぐに日常に変わってしまう。
そのことが私を苦しめている。楽しめない。
だから、菜緒子に確かめたい。
『君はなぜ私の前に現れたのか?』


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
相原がここまで幻想にのめり込むのは想定外だった。
人それぞれ日常に不満を持ってはいるのは間違いない。だから・・・

『非日常を楽しむ』などとは、ちょっとした遊び心からでた言葉だった。
深い意味はない。しかし、ここまできたならば、犯行を止めなければならない。

猟奇殺人の動機は非日常の体感ならば、その原因は私の侵入にあったことになる。
はやく処理しなくてはならない。事実を隠すためにも・・・・・
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Posted by タンクん at 07:17Comments(1)

2015年07月07日

回顧・・・2

2015年7月
<相原 真>

『あぁ やっと会えた。』
『なぜすぐに会ってくれなかったんだ?』

相原はハンマーを握りしめている。ハンマーの先からは血がしたたり落ちている。

『また殺したのね。 非日常は楽しい?』
『そんな事はどうでもいい。 菜緒子 教えてくれ 君の目的はなんだ?』
『目的?』

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私には目的などない。いやなかったはずである。
いまとなっては今回の潜入で、この事件を終わらせる事が目的である。
しかし、彼に説明しても解らないだろう。 生きてる時代が違う。
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『教えてくれ。教えてくれ。君はなぜ・・・』
相原は菜緒子の肩を揺すった。菜緒子の傍らには、ハンマーで頭に穴を開けられた男が横たわっている。

『私は貴方に楽しみを提供しただけよ。』
『菜緒子、知ってるかい。 非日常が続けばそれは日常に変るんだよ。もう楽しくもなんともないんだよ。なんとも。』
『知ってるわ。だから非日常を味わうためにまた違う楽しみを見つけるのよ。』
『そうやって、人は暮らしているわ。でも、あなたは違う。殺人に執着するのはなぜ?』
『君に会いたいからさ。』
『えっ!会いたいから・・・』

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
相原の答えは驚きであった。
菜緒子という幻想に会うために殺人を繰り返している。
この会話も菜緒子との交わりも全て脳の中の出来事のはず。
現実と幻想が交錯しているのだろう。
侵入の影響は計り知れない。
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『解ったわ。これからは一緒にいましょう。』
『ほんとうだね。いつも一緒なんだね。』
『そうよ、さぁ。この薬を飲んで二人で眠りましょう。』


『お客さん。時間超過してますよ。大丈夫ですか?』
管理人が鍵を開けて中に入ると、部屋には男が二人横たわっていた。
  


Posted by タンクん at 18:08Comments(0)

2015年07月08日

希望・・・1

2025年 2月 中津市是則・・・総合研究所
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『おい! ずいぶん長い旅行だったな?』
『はい。今回は・・・、でも収穫でした。』
『ほう。じゃ~ ようやく解決なのかな?』
『はい。』
確認を終えると、安藤はその部屋を立ち去った。
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相原 真 ・・・ 2015年7月死亡
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なんとか処理できた。
私の遊び心から始まった事ではあったが、問題が発覚する前に終わらせた。
もし、犯人(相原 真)が捕まっていたら、菜緒子の事が知られる。
実態がないので、単なるたわごとで済まされたかもしれない。
ただ気がかりなのは、相原が持っていた写真。
そこにははっきりと菜緒子が写っている。
まさしく菜緒子は現実に存在していたのだ。



猟奇殺人は終わった(終わらせた)が、疑問が残っている。
創り出した幻想がなぜ実体化したのだろう?
それともただ写真に写り込んだだけなのか?念写のように・・・
いや念写なら撮影者が起こすものだ・・・

撮影者を調べなくてはいけない。・・・・

私は侵入先を捜しはじめた。

  


Posted by タンクん at 07:21Comments(0)

2015年07月08日

希望・・・2

『おはよう。』
『あぁ。おはよう。』
『先週休んでたから、もう元気なんじゃないか?』
『う~ん。でも何かだるくてねぇ』

私は残された疑問を解決する手段を考えていた。

『ところで、あの犯人は誰だった?、判ったんだろ?』

“相原 真”の事は言えない。
私はカルト集団の教祖が犯人と言うことで、なんとか彼の質問をかわし続けた。

『ふ~ん。やっぱりね。例の分裂したカルト集団ならありそうな話だね』
『で、動機は?』 
『繰り返してるんだから、一過性ではないよね。』

その通りである。

“相原 真” が殺人を繰り返した動機は菜緒子に会いたかったから・・・・
“相原 真” にとって菜緒子は実在していた。脳裏に潜む者と知っていたとしても、
実像化した菜緒子に会えていたのだ。

私は“相原 真” に呼び出されていたのか?
操られていたのは実は私の方ではなかったのか?・・・・
  


Posted by タンクん at 17:21Comments(0)

2015年07月09日

疑惑・・・1

『なぁ~知ってるか? PP(ペネトレイト プロジェクト) がもうすぐ終了だってよ。』
『えっ! いつ』
『近いうちだって聞いてるけど・・・。なんでも目的が達成されたとかなんとか・・・。』
『目的って、犯罪心理の解明はまだ確立されてないじゃないか?・・・』
『あぁ。いやねぇ。それがよく解らないんだよ。 実像化がなんとか・・かんとか・・・・・・』
『まぁ。会議室から漏れた話だからよく聞き取れなかったけどね。』
『楽しい旅行なら今のうちかもよ。 じゃあな。また後で。』

実像化・・・

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PPの陰で他のプロジェクトが進行していたのか?
実像化・・・ 菜緒子の写真
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Posted by タンクん at 07:11Comments(0)

2015年07月09日

疑惑・・・2

2025年 3月
~臨時役員会議~

『今日の議題は例のプロジェクトの事だと・・・』
『はい。みなさんお集まりなので、臨時役員会議を始めます。』
『お手元の資料をご覧ください』

“犯罪心理の探究” と銘打った資料(大きく極秘の印が押してある)
1.  殺人者の思考解明
   殺人の動機の解明
   殺人に至る思考変調の解明
   殺人に至る物理的契機

2. 制御措置の構築
   心理学と思考術
   思考特性の解明

3.  発展的誘導措置の可能性
    ・
      ・
      ・
      ・

このプロジェクトには、“個別意識空間侵入装置”を使用する。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『このプロジェクトは本日をもって終了します。』
安藤の声は少し誇らしげである。

『もう、解明は完結したってことですか? 詳細を教えて下さい。』
『みなさんもご存じの通りですが、思考解明と言っても、さまざまです。』
研究主任の伊藤が説明を始める。
『思考解明・・・つまりどの段階で殺人という行動に心身がもって行かれるか?は、該者のその時点の心理状態による事が明らかになりました。』
『そんなことは解っていたことでしょう。』
  


Posted by タンクん at 17:16Comments(0)

2015年07月10日

疑惑・・・3

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研究所内第1会議室

伊藤がすぐに返答した。

『はい。解っていました。』
『我々は、心理状態が思考回路に及ぼす影響を思考解明と言うワードで探究してきました。』
『環境によって形成された思考回路は、あるスイッチで行動を伴う狂喜に向かいます。』
『どう言うことですか?』

『スイッチには色々ある。 最近の研究では“遺伝子スイッチ”が注目されているが・・・』
『“殺人スイッチ”と言うべきものでしょうか。』 
『とにかく、そのスイッチを見つけることが思考解明と言うことなんですか?』
『我々は、脳裏に侵入しそのスイッチが何なのか?を探ってきました。』

伊藤の声が少し高くなっている。

立ち上がった新庄の顔は高揚している。

『そのスイッチを見つけたんですね。』

少し間をおいて、伊藤は誇らしげに続けた。

『そのスイッチは視覚にありました。』

『視覚』

『つまり、目で見なければスイッチは入らない。』
『そうです。それを確かめる為に、我社の研究員に極秘に実像化をしてもらいました。』

『実像化と言っても・・・・』
  


Posted by タンクん at 07:21Comments(0)

2015年07月10日

陰鬱

2025年 4月

プロジェクトの終了を告げられて、研究室の穴も封鎖された。
しかし、私の抱いた疑惑はだんだんと大きくなっている。
どうにかして確かめなければならない。
私は実像化の意味はわからないが、確かに菜緒子は存在していた。
私の創り上げた“菜緒子”がなぜそこに存在しえたのか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
写真の撮影者が見たい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

“個別意識空間侵入装置”といっても人工的に作り上げた装置ではない。
いつからか存在していた“穴”を偶然発見しただけである。
この“穴”、 “人の脳裏に侵入できる穴” が何の為にここに存在していたのか?
その最大の謎を知りたいと思っているが、まずは“菜緒子”を実像化できた証拠である“その写真”の
撮影者が何か知っているのではないか?

私は直観的にそう感じている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
封鎖されていたが、プロジェクトメンバーのペネトレイターである私にとって
“その穴”に入るのは容易だった。
また、あの感覚が体を襲う。
なんとも気味の悪い感覚・臭気・・・・・

穴の出口は白井の脳裏。
久しぶりの白井だが、妙に懐かしくもある。
設定時期は例の写真。撮影者は目の前にいる。

足の長い三脚の上にライカだろうか?ごついカメラがちょこんとのっている。
カメラから伸びた暗幕をかぶった撮影者がレンズを調整している。
『はい。撮りますよ。いいですか~。』
『はい。チーズ!』
撮影者が顔を出した。

・・・・ 安藤 ・・・・・

  


Posted by タンクん at 18:08Comments(0)

2015年07月11日

NEXT STAGE へ

回想はここまで・・・・

次回からは全てのなぞが解明されます。
中小企業でのタンクんの頑張りが重要な鍵になります。

待っていて下さい。  


Posted by タンクん at 07:27Comments(0)