陰鬱
2025年 4月
プロジェクトの終了を告げられて、研究室の穴も封鎖された。
しかし、私の抱いた疑惑はだんだんと大きくなっている。
どうにかして確かめなければならない。
私は実像化の意味はわからないが、確かに菜緒子は存在していた。
私の創り上げた“菜緒子”がなぜそこに存在しえたのか?
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写真の撮影者が見たい
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“個別意識空間侵入装置”といっても人工的に作り上げた装置ではない。
いつからか存在していた“穴”を偶然発見しただけである。
この“穴”、 “人の脳裏に侵入できる穴” が何の為にここに存在していたのか?
その最大の謎を知りたいと思っているが、まずは“菜緒子”を実像化できた証拠である“その写真”の
撮影者が何か知っているのではないか?
私は直観的にそう感じている。
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封鎖されていたが、プロジェクトメンバーのペネトレイターである私にとって
“その穴”に入るのは容易だった。
また、あの感覚が体を襲う。
なんとも気味の悪い感覚・臭気・・・・・
穴の出口は白井の脳裏。
久しぶりの白井だが、妙に懐かしくもある。
設定時期は例の写真。撮影者は目の前にいる。
足の長い三脚の上にライカだろうか?ごついカメラがちょこんとのっている。
カメラから伸びた暗幕をかぶった撮影者がレンズを調整している。
『はい。撮りますよ。いいですか~。』
『はい。チーズ!』
撮影者が顔を出した。
・・・・ 安藤 ・・・・・