祖業・・・2
まさに、私の働きかけが白井を違う方向に導いてしまったのではないか?
ただ、白井の行動は彼特有の思考回路によるものであるし、働きかけが多く影響したとは思えない。
研究所の規定では、意識に侵入しても意識を操ってはいけないことになっている。
簡単に人の思考を操れるとは考えていなかったが、“菜緒子”という幻想を使えば
それは案外簡単だった。
その事で“犯罪者の意識解明”といった本来の目的を明確にも出来たと考えている。
白井が巨額の融資を受ける為、特定の秘密サイトを餌に揺すり、駄目なら殺害していくと言った方法は、
そんなに驚くことではなく、ふつうにテレビドラマなどでやってる陳腐なストーリーだった。
ただ、ふつうは実行されないばかばかしい話なのに、まじめに取組んでいた白井のザ・サラリーマンとも言うべき
心理がすごく気になり、報告書を出した後も何度か侵入していた。
一端終了した者に再侵入することは許されていない。
私は2度ほど再侵入した後は、白井の身近な人間に侵入する様になっていた。
それは “相原 真” 白井の後輩であり、後の猟奇殺人の犯人!
彼らには、脳裏の意識コントロールで幻想を見せている。
そう、幻想である菜緒子には実態はないのだ。
侵入を繰り返すことで、“相原 真” は私に依存してしまった。
私の正体を追い求める様になり、あの写真を見つけた。
白井と一緒に写っている写真。
しかし、写っているはずはない。 なぜなら幻想だから・・・。
なぜ菜緒子は写真に写っているのだろうか?